SNSでは様々な違法労働がバズりブラック企業大賞も毎年発表され長時間労働やサービス残業、パワハラにセクハラから過労死までブラック企業の話題に尽きない昨今ですが、

あれ・・・
弊社ってもしかしてブラックだった???

なんて自分の職場について考えるきっかけになったりするのでは無いでしょうか?

今回はそんな時代に今後より重要になってくるであろう企業側が負う義務の1つ『安全配慮義務』について解説していきます。

うちの会社はどうだろうと是非自分ごととして読み進めていただければ幸いです。

そもそも安全配慮義務って何?

安全配慮義務は雇用主である法人側が労働者に対して追わなくてはいけない義務として2008年に労働契約法に定められた『労働者が安全で健康に働けるよう、企業側が配慮すべき義務』のことで、この安全配慮義務をおこたった結果労働者に不利益が発生した場合は安全配慮義務違反として賠償請求が認められたりもします。

(労働者の安全への配慮)第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用:労働契約法第5条

では具体的に

『労働者が安全で健康に働けるよう、企業側が配慮すべき義務』

とはなんでしょうか?

分かり易文章にすると、

労働者が安全に働けるよう企業が一定の規程を作り、規程を適正に管理し、労働者に何らかの損害を生じさせない様にすること。

となります。

例えば工場で大きな機械を使っていて作業中に従業員が怪我をしたとしましょう。

この場合、以前同じ機械で全く同じ作業をしていて、その当時から作業の工程が変わっていなかったり怪我をしないための規程が作られなかったりなどして今回の怪我が発生した場合、この義務を怠っていたと判断される可能性があります。

仮に安全配慮義務を怠っていたと判断された場合、企業側は多額の損害賠償請求を受けることもあります。

しかしどういった配慮をするかについては企業規模や事業内容にを加味して個別具体的に企業側で判断することになっていて一律に決められていないというのが現状です。

なのでもし自分が仕事中に怪我をしてしまって、「これは安全配慮義務違反では?」と思った場合はあなたのお勤めの会社の規模と業種に類似した企業の判例など参考に判断して専門家に相談すると良いでしょう。

「作業環境」と「健康管理」の安全配慮

安全配慮と聞くと単純な怪我などを想像しがちですが、それ以外の様々な不利益に対応するため大きく2つに分類されています。

それが「作業環境」と「健康管理」です。

作業環境の安全配慮義務

例えば工場などで従業員が安全に作業ができる様に機会を定期的にメンテナンスして常に正常な動作をする様にしたり、一度予想外の怪我などが発生してしまった場合その事象が再発しないための再発防止策を施したり、働きやすい環境を整えたりなど、「従業員が作業のしやすい、不利益の被ることがない様な作業環境を整えること」がこれに当たります。

なお、職場だけでなく寮や宿泊施設、研修施設などでも作業環境の安全に配慮する義務が企業にはあります。

健康管理の安全配慮義務

健康管理とは企業が労働者の健康管理にも配慮しなくてはならないという考え方です。

単純な長時間労働を未然に防ぐといったことや心の健康を保つためにメンタルヘルス対策をすることもこの健康管理に入っていますし、長時間のPC作業をする様な職種の人の場合だと連続したPC作業に制限を設けて休憩してもらうなども「健康配慮義務」になります。

最近はうつ病や様々なハラスメント問題も話題になっていることから目に見えないことにも配慮することが義務付けられている傾向にあります。

安全配慮義務違反として損害賠償請求が認められた判例

それではここまで安全配慮義務に関しての解説をしてきましたが、先ほども書いた通り企業の規模や事業内容によって判断が変わってきてしまいます。

事前に予見できるか否かが安全配慮義務違反となるかの争点となるとはいえ一概にはいえない部分もあると思うので今回は実際の判例をご紹介しますので、ご自身の現状と照らし合わせて安全配慮義務違反になるのかどうか考えていただきたいと思います。

電通事件、安全配慮義務違反で賠償命令

1991年にに電通の男性社員が過労により発症したうつ病が原因で自殺した事件に関して、1億6800万円の賠償金を支払う様に命じた判例です。

1991年8月27日、電通に入社して2年目の男性社員(当時24歳)が、自宅で自殺した。男性社員の1ヶ月あたりの残業時間は147時間にも及んだとされる[3]。遺族は、会社に強いられた長時間労働によりうつ病を発生したことが原因であるとして、会社に損害賠償請求を起こした。これは、過労に対する安全配慮義務を求めた最初の事例とされ[1]、この訴訟をきっかけとして過労死を理由にした企業への損害賠償請求が繰り返されるようになったといわれる[1][2][3]。2000年、この裁判は同社が遺族に1億6800万円の賠償金を支払うことで結審した[4]。

判決では、酒席で上司から靴の中に注がれたビールを飲むよう強要されたり、靴の踵で叩かれるなどの事実も認定された。

引用:Wikipedia

サニックス事件、研修の負傷で病院受診の許可が得られなかった

2018年2月22日に判決が下された株式会社サニックスが起こしたいわゆるブラック研修で起きた事件です。

24キロメートルを完歩するというスピリッツなる新人研修で怪我をして歩行訓練の中断や病院受診を求めても、これを拒絶して歩行訓練を継続させられ、スピリッツに参加させられたというのもで安全配慮義務違反による損害賠償が認められ2222万4145円+遅延損害金を命じた事例です。

本事案は、Y社(被告)における新人研修を受けていた従業員X(原告)が、当該新人
研修カリキュラムの一つである24キロメートルの歩行訓練を受けた際に足を負傷したとして、主位的にはY社の不法行為に基づく損害賠償請求を、予備的に安全配慮義務違反(債務不履行)に基づく損害賠償請求を行った事案である。
Y社においては、入社後の新人研修として、営業内容・方法等の座学、試験、課題提出のほか、「歩行訓練」という研修があった。特に歩行訓練期間の最後は、24キロメートルを制限時間5時間以内で完歩することが求められる「サニックススピリッツ」という名称の訓練があり(以下、スピリッツ)、新人研修の中で最も重視されていたプログラムであった。
Xはこの歩行訓練中に右足をくじくなど、足首や膝等の痛みを訴えていたものの、スピリッツに参加し完歩した。
しかし、その後、Xは病院において、右足関節挫傷、両側膝関節挫傷、右足関節離断性骨軟骨炎等の診断がなされた。
さらに、福山労働基準監督署長により、平成26年10月、Xの右足関節の機能障害について右足関節離断性骨軟骨炎によるものとして、後遺障害等級10級10号に該当すると認定され、同年11月には、左下肢の神経障害は後遺障害等級12級12号に該当すると認定された。

引用元:WEB労政時報

違法な労働や賃金形態、仕事中の怪我などをした場合はプロに相談

今回は安全配慮義務について条文から実際の判例も紹介しました。

安全配慮義務は労働者の健康を守るための義務でこれは法律上の義務です。

今の職場に『あれ?』と感じることがあれば泣き寝入りせずプロに相談することをオススメします。

もし、派遣など直接雇用でなかった場合は派遣会社の担当者に相談した上で必要な手続きをしたい旨を伝えしっかりと対応してもらう様にしましょう。