皆さんは「同一労働同一賃金」という言葉を聞いたことありますか?

それは、同じで職場で働く正規雇用の従業員と、非正規雇用の従業員との賃金や待遇の格差をなくすための新しい労働法のことです。

今までも労働関係の法律により、一定のルールは設けられていましたが、それはあいまいなものでありました。

ですが、それらが明確化され、新たな法律として施行されようとしています。

近い将来で施行される「同一労働同一賃金」について、また派遣社員目線でどのように改善されるのかを説明していこうと思います。

まず同一労働同一賃金について知ろう!

この「同一労働同一賃金」とは、詳しくはどのような方法で改善していくのでしょうか?

その方法には2つの方式があり、「派遣会社」と「派遣先の会社」はそれぞれ対応しなくてはならないことがあります。

また、一体これはいつから施行されるのでしょう?

それらについて追っていきます。

同一労働同一賃金って何なの?

冒頭でも述べましたが、「同一労働同一賃金」とは、正規雇用と非正規雇用の従業員間の賃金や待遇の格差をなくすことを目的とした労働法です。

別名として、パートタイム・有期雇用労働法とも呼ばれます。

正規雇用と非正規雇用とありますが、正規雇用とは正社員のことです。

一方、非正規雇用にはいくつか種類があります。

  • 有期雇用労働者
  • パートタイム労働者
  • 派遣労働者

この3つの雇用形態で働く労働者が対象となります。

派遣社員の場合で例えてみましょう。

ある会社で正社員と派遣社員が同じ業務で働いていると仮定します。
賃金に関して、正社員はその会社から貰いますが、派遣社員は派遣会社から貰うことになりますよね。

この場合、2人はそれぞれの会社から賃金を受け取ることになるので、賃金の差が生まれてしまいます。

また、待遇も会社によって異なるので、その部分でも差が生まれるでしょう。
正社員と派遣社員とで比べると派遣社員がその点では劣ってしまうことは誰もが分かると思います。

このように2人は同じ業務を遂行しているのにも関わらず、賃金や待遇で差が出ることは不公平であると言えます。

法律的にこれらを平等にしていこうという背景の元、これが施行されるのです。

その1:派遣先均等・均衡方式

このパターンは、派遣先で同じ業務をしている正社員の給与をはじめとする待遇をベースにして、均等・均衡を図る方式です。

分かりやすい図をお借りしました。


引用元:http://cells-sr.com/hatarakikata/index.php/same_condition/746/

図は派遣元(派遣会社)と派遣先の会社、派遣労働者と通常の労働者の関係を表しています。

派遣社員の給与は派遣元から支払われますので、派遣元が派遣先の正社員の待遇情報について知らなくてはなりません。

ですので、派遣元は派遣先から諸々の情報を提供して貰うことになります。

それを踏まえて、派遣社員の待遇について修正していくことになります。

この方式に則るならば、派遣先や業務も同じである場合、異なる派遣会社から派遣されていたとしても待遇は同じになるでしょう。

その2:労使協定方式

2つ目のパターンは、派遣労働者の業務と同じ業務に従事する「一般労働者の平均賃金の額(賃金水準)」を労使協定によって定め、それをベースに均等・均衡を図る方式です。

労使協定とは、労働者(=派遣社員)とそれを使用する者(=派遣会社)の間で締結される、書面による協定のことです。

この図を参考にしてください。

引用元:http://cells-sr.com/hatarakikata/index.php/same_condition/746/

この方式ではパターン①のように派遣先の待遇に合わせる必要はありません。

同じ地域で働く、同じ業務に従事する正規労働者の平均賃金(以上)に合わせることになります。

いつから施行されるの?

それでは、「同一労働同一賃金」はいつから施行されるのでしょうか?

非正規雇用労働者には3つの種類がありましたが、場合によっては施行時期が異なる場合もあります。

表にまとめてみました。

大企業 中小企業
派遣社員 2020年4月〜 2020年4月〜
有期雇用労働者
パートタイマー労働者
2020年4月〜 2021年4月〜

有期雇用・パートタイマー労働者においては会社が大企業か中小企業かで異なります。

ですが、派遣社員の場合は会社の規模を問わず2020年4月から施行されます。

派遣社員の雇用環境はどのように変わる?

この「同一労働同一賃金」は、非正規雇用労働者にとって力強い味方です。

正社員との格差をなくそうという素晴らしい労働法ですよね。
これによってたくさんの方々の不安や不満が改善されることでしょう。

ですが、良いことばかりではなく、落とし穴はないのか気になるところです。

派遣社員にとってのメリットはどんなことがあるのでしょうか?

逆に、デメリットとなってしまう部分はあるのでしょうか?

賃金や待遇の向上でモチベーションが上がる!

なんと言っても、一番大きいメリットは雇用待遇の向上です。

  • 「いくら頑張っても評価されず、昇給の可能性もない」
  • 「同じ仕事をしているのに待遇の差が歴然だ」

このような雇用環境では、労働意欲は衰退していく一方です。

では、厚生労働省が発表した「同一労働同一賃金ガイドライン」を見てみましょう。


引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

表には給与や賞与、各種手当について記載されています。
非正規雇用労働者において、不合理な待遇が禁止されていますよね。

正社員と同様に、昇給や賞与の支給または、通勤手当などの細かな手当にまでルールが取り決められています。

同じ職場で働く労働者が全員同じ基準で評価されるようになれば、仕事へのモチベーションが上がり、生きがいにも繋がることでしょう。

会社側としても、向上意欲の高い一生懸命に働く労働者を持つことで、会社の成長に追い風が吹くのではないでしょうか。

派遣社員として働きやすくなる

「やってみたい仕事があるけれど、派遣だから心配で踏み出せない」

このように派遣社員の悪いイメージが定着していて、やりたいことに踏み出せない方もいるのではないでしょうか?

正社員と比較してしまうのはありがちで、非正規雇用で働くのには勇気や決断力が必要かもしれません。

ですが、これからこのような不安が改善されていくことになります。

求職者や未就業者は選択肢として、「派遣社員」という働き方を選びやすくなるでしょう。

スキルアップできる機会が増える

同一労働同一賃金のガイドライン案には、福利厚生や教育訓練を受ける機会についての事項も含まれています。

引用元:厚生労働省-同一労働同一賃金ガイドライン

4つ目の事項は、「同じ職務内容であれば、職務に必要な技能・知識を習得させるために教育訓練を行いなさい」という意味合いです。

会社は、正社員の教育と同様に、非正規雇用労働者にも教育を行わなければなりません。

派遣社員も職務に必要な教育を受けることができるようになり、スキルを身に着けられる環境が与えられます。

その流れでさらなるキャリアアップを重ね、仕事の幅を広げられる可能性も高くなります。

派遣社員の求人数が減る可能性がある

派遣社員の賃金の上昇に伴い、会社側のコストの問題が出てくる可能性があります。

本来、正社員よりもコストを抑えて短期間に雇うことができるとして派遣社員は会社にとって都合の良いものでした。

賃金の上昇によりそれが崩された場合、会社によっては対策として、派遣社員の求人数を減らすということが大いに考えられます。

非正規雇用に魅力が高まる中、会社側の対策によって、競争率が高まってしまうかもしれません。

まとめ:他人事だと思わず同一労働同一賃金をしっかり理解しておこう

今回の記事では、同一労働同一賃金について説明しましたが、どのような印象を受けましたでしょうか?

非正規雇用労働者にとってたくさんのメリットがありましたよね。

これは派遣として働いている方にとって朗報だと思います。
正規雇用と非正規雇用の待遇の差は長年の課題でありましたが、これがようやく本格的に改善されようとしているのです。

施行に伴って、問題点や課題が出てくるとは思いますが、少しづつ良い方向に向かうことを願いましょう。