求職者が就労先を探す場合、人材派遣事業や有料職業紹介事業に登録して、職場を紹介してもらう方法が知られていることでしょう。
派遣会社が有料職業紹介を行っていたり中々ややこしい業態なため転職等をあまりしない人には両者の事を正確に理解していない人も多いと思います。
どちらも就職希望者に就職先を斡旋する点では変わりませんが、実はいくつかの点で違いがあります。
では人材派遣事業と有料職業紹介事業はどんな違いがあるのでしょうか?
この記事では人材派遣事業と有料職業紹介事業、この2つの違いとそれぞれのメリットについて解説しましょう。
人材派遣と有料職業紹介の違い
人材派遣事業と有料職業紹介を比べてみると、まず雇用主の違いが挙げられるでしょう。
人材派遣事業の場合、派遣会社が雇用主です。
就業先は派遣会社とは異なる企業でも、雇用主はあくまでも派遣会社なのです。
したがって、就業先と労働者は雇用関係になく、現場の上司との関係において労働法が適用されないなどの問題が生じているケースもあるかもしれません。
これに対して、有料職業紹介事業を利用した場合は、雇用主は就業先となる他の企業です。
求職者が有料職業紹介事業の転職サイトに登録すると、転職コンサルタントが付き、就職先が決定して雇用契約を締結するまでサポートしてもらえます。
人材派遣会社では、こうした転職コンサルタントの制度はありません。
その代わりに、担当者が求職者の希望に合致する就業先を探して紹介してくれます。
また、有料職業紹介事業で紹介された企業との雇用契約は、全てではありませんが、期間の定めのないものが一般的で、人材派遣会社から紹介されるほとんどの就職先は、契約期間が決められた有期雇用であり、更新が約束されているわけではありません。
派遣会社を利用するメリット
人材派遣会社を利用すると、様々なメリットがあります。
実は、多くの派遣会社が行政機関から有料職業紹介の許可を得ているため、求職者には、派遣社員だけでなく正社員の仕事も斡旋してくれる人材派遣会社も少なくありません。
紹介予定派遣の案件で求人を探せば半年間の派遣期間を経て有料職業紹介と同様に直接雇用として派遣先で迎え入れてくれるため、就業先の社風や業態が自分とあっているかあらかじめ確認して後悔のない転職をすることも可能です。
また、これとは別に、人材派遣会社からの派遣社員として長期間働いていると、派遣先企業から能力と適性を認められて直接雇用されることもあります。
さらに就業環境という面では万一就業先がブラック企業だったら、派遣会社に訴えれば直ちに就業先を変更してくれるでしょう。
派遣会社からしてみれば派遣社員には長く勤めてもらった方が利益につながるので非常に大切にしてもらえるのです。
派遣先の職場では上司に相談しにくいことも、派遣会社に相談して解決法のアドバイスを受けたり、派遣会社から派遣先の企業に意見の具申をしてもらったりできます。
職種が豊富で選択の幅が広いことも特徴と言えます。
多様な職場で実務経験を積めば、将来の仕事に生かせる機会もあるでしょう。
派遣社員は平均時給が高く正社員より給与の高い仕事も少なくありませんから経験もお金も得ることができます。
また、労働形態が自由で、勤務地や勤務時間などを自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
派遣社員は予め契約した業務以外は関わってはいけないことになっているため、派遣先で余計な雑務を押し付けられる心配もないでしょう。
必ず選考に通るわけではありませんが、専門的スキルがあって即戦力となれる人材であれば、求職者にとって人材派遣会社は利用しやすいと言えます。
求職者が自分で就職活動をしなくても、人材派遣会社の担当者が積極的に仕事を探してきて候補を提示し、求職者が気に入れば職場見学や面談を設定してくれるので、就職活動に時間を割けない求職者には大変便利です。
有料職業紹介を利用するメリット
転職サイトを運営する有料職業紹介事業は、ハローワークや自治体の行う就職支援などの無料職業紹介事業と対比される存在で、紹介先企業から紹介手数料を受け取って運営する事業です。
無料の職業紹介と比較してしっかりとお金を出して求職者を探すことができるため労働者にそれなりの資金を投下できる企業の良い求人が多いという特徴があります。
有料職業紹介事業を利用した場合、紹介先企業と直接雇用関係を結ぶことが大きな特徴で、紹介先が優良企業であれば福利厚生の充実などが期待されるでしょう。
人材派遣会社だったら、紹介先がどんなに優良企業でも、その会社の福利厚生などの恩恵を全ては受けることができません。
また、求職者一人一人に転職コンサルタントが付いて、就職先が決まるまで支援してくれます。
転職コンサルタントは、履歴書の書き方や面接の対処法などもきめ細かく指示してくれるでしょう。
就職を希望する企業の選考方法を心得ていて、上手く対応する具体的方法も伝授してくれることもあります。
このように、転職コンサルタントが選考通過まで粘り強く面倒を見てくれることも、有料職業紹介事業のメリットと言えるでしょう。
直接雇用を求める個人は、原則として一人で就職活動をしなければならないのですが、有料職業紹介事業を活用すれば、一人で選考先企業の会社情報を調べる苦労をしなくても就職先を見つけられるのです。
研修などを通して人材育成をする制度のある就業先企業を紹介してくれる可能性もあるので、即戦力となるスキルが無くても採用され、スキルアップできる場合があります。
特に、最終的に正社員として採用されたいと考えている求職者は、有料職業紹介事業に登録しておくと有利でしょう。
雇用形態にこだわらないなら両方登録しておこう
以上のように、自由な労働形態を選びたい人やスキルに自信のある求職者なら人材派遣会社が適しており、迅速に正社員を目指す求職者は有料職業紹介事業に登録することが望ましいと言える面があります。
しかしながら、実際には人材派遣会社と有料職業紹介事業の両方に登録しておくことが好ましいでしょう。
正規雇用に目標を絞り、有料職業紹介事業の転職サイトだけに登録してチャンスを狙う方法もありますが、正規雇用につながる雇用に固執していると、とりあえず働く場所を見つけることが困難で、無職の状態が続くおそれもあります。
それから、派遣社員は常に正社員より低収入だから敬遠するという求職者もいますが、現実には正社員の方が派遣社員より報酬が高いとは限りません。
むしろその逆で派遣社員の方が給料が高いことの方が多いです。
暫定的でも派遣社員として働いて収入を得ていれば、気持ちにもゆとりができて、落ち着いてキャリアアップを図れるでしょう。
したがって、雇用形態にこだわりがなく、正社員を目指すものの無職は避けたいという求職者は、人材派遣会社と有料職業紹介事業の両方に登録することをおすすめします。
登録したうえで、どちらに力点を置く方が大きいメリットを得られるか自分で考えて転職活動をしましょう。
人材派遣と有料職業紹介の違いを知って就職活動に生かそう!
人材派遣会社と有料職業紹介事業は、雇用形態や就業先の紹介方法などの点で、様々な違いがあります。
どちらも一長一短ありますが、いずれも正規雇用への道が開かれているので、雇用形態にこだわらず、とりあえず無職を避けたい求職者は、両方に登録しておきましょう。
それぞれのメリットを理解して少しでも転職活動を楽に有利に進められる様にしておきましょう。
派遣だからと考えず紹介予定派遣など様々な制度が用意されていますし、これらの制度を積極的に利用して、正規雇用への道を切り開く工夫が欠かせません。