世代によっては『ハケンの品格』というドラマのタイトルを聞いたことがある人も多いでしょう。
実際に視聴した人以外は、派遣社員のことを扱っているドラマとしか知りません。
実際にどんなドラマなのか、派遣社員はどのように扱われているのか、気になる人は多いです。
また、この作品以外に派遣社員のことを扱っている作品はあるのでしょうか。
この記事ではドラマ『ハケンの品格』についてと派遣そのものについて紹介していきます。
ハケンの品格ってどんな物語
「ハケンの品格」は2007年に放送されたドラマで、特Aランクの評価を受けるスーパー派遣社員である大前春子を中心に正社員と派遣社員との違いや、仕事の在り方について問いかけるドラマです。
無茶な契約条件を承諾させるだけのことはある数々の資格を持つスーパー派遣社員が、老舗食品商社で3か月の契約期間内に巻き起こす出来事を描いています。
どんな困難な仕事であっても勤務時間内に仕上げ「正社員が幅を利かせ、派遣社員が下に見られていた」会社の風を変えていくまでに至る春子の姿が痛快だとして、人気を誇りました。
ハケンの品格第一シーズンのストーリーは?
丸の内にある老舗食品商社「S&F」で、閑職であるマーケティング課の主任となった里中賢介のもとへ、スーパー派遣社員として面談に来た春子は、採用条件として「契約延長はしない、担当セクション以外の仕事はしない、休日出勤、残業もしない」を突きつけました。
一緒に面談していた同期入社の親友、東海林が怒りをあらわにしても、彼女は無視します。
小規模な部署のマーケティング課で、無茶な仕事や正社員からの圧力と戦いながらも、持っているスキルを活かしてスペイン語の通訳やマグロ解体、ウグイス嬢、トラック運転などの活躍を見せました。
媚びずに自分の仕事を黙々と行う彼女に、正社員たちも次第に心を動かされ、最後には残ってほしいと懇願されますが、期限が来たからとさっそうと立ち去っていきます。
そして、彼女をはじめとする派遣社員が企画した「ハケン弁当」によって里中へ社長賞が与えられることとなりますが、里中は派遣のおかげだからと辞退しました。
ハケンの品格第二シーズンのストーリーは?
13年の時を経て、2020年4月から第二シーズンが放送されています。
営業企画課長に昇進した里中が春子を再び「S&F」に呼び戻しました。
特Aランクから特Sランクにグレードアップし、シングルマザーとして子供を育てながら以前と同様なれ合わず、スキルを武器に仕事をこなしていきます。
春子は停泊するクルーザー上で社運を賭けた商談の通訳を任されますが、商談は決裂寸前です。
そんな時、里中の携帯に新人派遣社員の小夏から、他の派遣社員が社員からセクハラを受けていることを匿名で告発したところ、人事部に監禁されたという電話がかかってきます。
その後、春子の決断によって多くの人が思いもかけない事態に巻き込まれてしまいました。
次々と春子が痛快な仕事ぶりを見せてくれる予定ですが、新型コロナウイルスの影響によって撮影が延びており、今後の展開が期待されています。
当時の反響と派遣の社会的地位
放送が2007年とこの記事を執筆時期から13年も前という事もあり現代とは社会的な背景がだいぶ変わってきました。
現代は当時と比較して派遣社員の数も増え待遇も改善され専門職や人手不足の業種であればフィクションの登場人物である大前春子と同じような時給を得る事ができるまでになりましたが、当時はどうだったのでしょう?
当時の反響は?
第一シリーズが放送された直後、高い反響を呼びました。
初回は18パーセントでしたが、徐々に視聴率がアップし、最終回は26パーセントという高い視聴率を誇っています。
派遣社員でありながら正社員よりもはるかにスキルが高い春子が正社員をやり込める姿に痛快さを感じるという意見や、自分もスキルアップをして仕事を頑張らなければならないといった意見が多かったようです。
また、派遣社員に対する正社員からの圧力や正社員と派遣社員の間の壁に関しては、多少誇張されているけれど、そのままだという意見が少なくありませんでした。
当時の派遣社員とは
当時派遣は35歳定年説が存在していました。
どんなにスキルが高くても、35歳以上の女性に対しての求人はほとんどない時代です。
派遣会社に登録していても雇用先の企業は35歳未満の女性しか求めていないため、どんなに仕事ができる人でも仕事がなく「定年」とされていました。
当時、女性が派遣社員の面接を受ける際に派遣元の担当者から
という話をされたと聞いた事があり、今では考えられないような時代だったようです。
ハケンの品格によって派遣社員の社会的地位の向上が見込めるかと思われましたが、残念ながら派遣社員は正社員と全く違った仕事をすることが多かったです。
また、社員食堂でも派遣社員だけ高額な料金で食事をしなければならず、同じ人間として扱ってもらえないところは変わりませんでした。
若手正社員は氷河期時代に雇用されており、会社にしがみつくあまり派遣社員を人間としてみない傾向が高かったです。
さらに、ドラマの直後、リーマン・ショックと呼ばれる株価大暴落を受け、企業が経費削減のため派遣社員の契約を大量に打ち切る事態がありました。
これを「派遣切り」と呼びます。
派遣切りによって多くの人が職を失い、自殺や犯罪に走った人もいました。
そのため、派遣とはいつどうなるかわからない職業として不安視する人が多かったです。
現代の派遣社員について
さて、『ハケンの品格』放送当時の派遣社員についてご紹介しましたが、現在の派遣社員はどのような変化を遂げたのでしょうか?
派遣社員の定義
まずは派遣の定義です。
派遣社員は人材派遣会社と雇用関係を結び、定められた期間派遣先企業で働く社員です。
給料や有給休暇をはじめとした福利厚生面に関する一切が派遣会社との契約によって決まります。
仕事上の指示を仰ぐのは派遣先の企業ですが、基本的には派遣会社との雇用関係を結んだ社員という立場です。
基本的には派遣元の社員と書きましたが、現代では派遣先の福利厚生も利用できるようになって仕事中に雇用されている会社が違う事を意識する場面は減りました。
2015年に労働者派遣法が改正され、派遣社員に対する福利厚生関連に関する企業の配慮義務が明記され、食堂やウォーターサーバーのような派遣先にある施設や備品は正社員と同じように利用できるのが今の派遣では一般的です。
2020年4月には改正労働者派遣法が施行され改正で同一労働同一賃金も導入されますます派遣社員の労働環境は改善されていくと思われます。
労働者全体の非正規雇用の割合
2017年の労働者人口における正規・非正規雇用の割合を見ると、正規雇用の割合が約60パーセントに対し、非正規雇用が約40パーセントとされています。
非正規雇用は15歳から64歳までの間で微減したのに対して、65歳以上の高齢者の割合が増加してきました。
ただし、非正規雇用の中で最も多い年代である25歳から34歳では3人に1人が非正規雇用となっています。
派遣社員の給料
働く時間によって月給は異なりますが、平均時給は1500円ほどで都市部では平均が1600円まで上がります。
フルタイムで働いた場合、残業を一切しなくても月収25万円、年収で300万円前後となっています。
正社員なども含めた20歳代の平均年収が残業等も込みで290万円前後、30代前半で320万円前後と考えると30代前半までであれば派遣社員も正社員と大差ないと言えるまでになってきたと言えるでしょう。
現在の派遣社員は労働環境、給料ともにハケンの品格放送当時と比べると格段に待遇が改善されました
派遣を題材にしたドラマを3つ紹介
今回、ハケンの品格というドラマの紹介から現代の派遣社員についてご紹介しましたが、ハケンの品格以外にも派遣社員が登場するドラマがいくつかあります。
派遣のオスカル 〜少女漫画に愛をこめて
引用:https://www6.nhk.or.jp/drama/pastprog/detail.html?i=oscar
2009年に放送された作品で、少女漫画好きな派遣社員三沢勝子が正社員や会社の体制に疑問を抱き、労働状況を改善すべく革命を起こすため、心の支えとしていた漫画「ベルサイユのばら」の登場人物になりきって行動するコメディドラマです。
派遣社員でありながら重役にも一歩も引かない姿勢を見せる勝子の行動に、痛快さを感じる人が多いです。
ドラマの中では正社員より仕事ができても派遣社員から正社員登用されにくい現実も描かれています。
偽装不倫
引用:https://www.ntv.co.jp/gisouhurin/
2017年に放送された作品です。
32歳で独身、パラサイトシングルの派遣社員として働く濱鐘子は、3年の婚活に疲れ果て博多へ一人旅をした際に、伴野丈と出会います。
この時姉から借りた服のポケットには入っていた結婚指輪を使ってとっさに既婚者のふりをした彼女に伴野は不倫を持ちかけます。
派遣だからこその身軽さと、不安定さが良く表れているドラマです。
運命から始まる恋~You are my Destiny~
引用:https://www.fujitv.co.jp/unkoi/
2020年4月期スタートの作品で、台湾ドラマのリメイクですが、派遣社員の悲哀がうまく描かれているドラマです。
平凡な派遣社員である佐藤彩は、正社員をはじめとした同僚に付箋一つで仕事を押し付けられ、一人残業する日々が続きます。
心の美しい彼女はシンデレラを夢見るも、現実はいつでも便利に使ってすぐ捨てられる付箋女と呼ばれる毎日を過ごしていました。
ところが、ひょんなことから恋人ができると、思いもよらぬ事件が起こり運命が大きく変化していきます。
このドラマは台湾ドラマのリメイクという事もありお国柄等、日本の派遣事情とは少し異なって描かれている事もあります。
派遣社員の悲哀を表したハケンの品格
氷河期時代に正社員になった人の中には、派遣社員を自分たちよりも下の立場だと思う人もいました。
そのため、無理な雑用を押し付けられたり、休日出勤や残業をさせたれたりするのは当たり前だったと言います。
ハケンの品格は正社員と派遣社員との対比をオーバーに描いていますが、どの企業でも起こっていた可能性がある、当時の派遣社員の現状を表現したドラマでした。
当時の派遣社員を知りたい人は、一度見ると面白いかもしれません。