皆さんは「引き抜き」という言葉をご存じでしょうか?
それは、働くあなたを気に入って他の会社が「うちで働かないか?」と提案してくるイメージです。
あなたの働きぶりを見て、ぜひ自分の会社で働いて欲しいという背景にあります。
自分を必要としてくれているという良い印象を受けると思いますが、
それが自分にとって本当にいい話なのかどうかをしっかり確認する必要があるのです。
この記事では、派遣社員として働く方が派遣先の会社から引き抜きの話があった場合に気を付けたいことや、それで起こる会社間のお金の動きについて触れていきましょう。
派遣社員から直接雇用として切り替わる時には気をつけよう!
派遣社員としてさまざまな派遣先で働いていると、「うちで働かないか?」という話が持ちかけられる可能性があります。
これは派遣先の会社にとって利益のある提案になります。
社員を雇うには求人募集をかけて、面接をして、どの人が頑張ってくれそうかなあ...と選考に頭を悩ませるのです。
これにはコストが掛かってしまいます。
ですが、優秀な派遣社員が自社で働いていたのならば、「そのままうちの社員として働かないか?」と提案するだけでその一連の流れを省くことができるのです。
スカウトされた派遣社員としては、喜ばしい話に聞こえるかもしれません。
ですが、一歩間違えると自分が不利になってしまう場合もあります。
それを避ける為に直接雇用について少し知識を蓄えていきましょう。
直接雇用にはどのような雇用形態があるの?
直接雇用があれば間接雇用はないの?と思う方がいると思います。
間接雇用とは、単純に派遣社員のことだと思ってください。
会社と従業員の間に派遣会社が仲介している雇用形態のことをいいます。
直接雇用はその逆ですので、会社と従業員が直接契約を交わす雇用形態となります。
では、その直接雇用にはどのような働き方があるのでしょうか?
- 正社員
- 契約社員
この2つが挙げられます。
直接雇用とは言っても正社員と契約社員とでは契約内容が異なる点があるのです。
それぞれの雇用期間や業務時間などについて比較していきましょう。
正社員 | 契約社員 | |
---|---|---|
雇用期間 | 長期契約 | 有期契約 |
業務時間 | 全員一律 | 契約ごとに設定 |
二重契約 | 不可能 | 可能 |
転勤 | 場合によってはある | 契約に明記されていればなし |
4つの項目について表にまとめてみました。
大きな違いとしては、定められる雇用期間の長さと業務時間についてです。
正社員には雇用期間が定められておらず、基本的に定年まで働くことができます。
つまり、解雇されたり退職しない限り働き続けることができるのです。
対して契約社員は、契約で定めた期間だけ働くことになります。
その期間の長さについては会社によって異なりますが、6ヶ月~1年が多いようです。
一般的に派遣社員の雇用期間よりは長めになっています。
補足ですが、契約社員の雇用期間は契約更新したとしても最長で3年となっていますので注意が必要です。
業務時間についてですが、正社員は全員一律で定められています。
一方、契約社員は契約ごとに業務時間が定められています。
企業によっては、個人のライフスタイルに合わせた業務時間に設定してくれるところもあるようです。
二重契約や転勤については企業によって異なる場合もありますが、基本的には表のようになっています。
契約を交わす際には事前に確認しなければならない事項があります。
事前に交渉すれば、融通が効く可能性も十分にあります。
直接雇用として働くメリット・デメリット
派遣社員から直接雇用として働くことは単純に考えればメリットの方が大きいような気がしますよね。
派遣社員よりは安心して働けそうだったり、正社員として働けるチャンスに思えるかもしれません。
直接雇用には正社員と契約社員があることを前述しましたが、
派遣社員と正規非正規含めた直接雇用2つを大きく括ってメリットやデメリットについて追っていきましょう。
メリット
今回は正社員と非正規社員をひとくくりにしているので社会的信用など副次的なメリットは除外して考えていこうと思いますが、直接雇用になった場合のメリットは主に3つあると思います。
- 安心して働くことができる
- 待遇が良くなる可能性がある
- より責任のある仕事に携わることができる
ではそれぞれ詳しく見ていきたいと思います。
〇安心して働くことができる正社員として働くことができるのならば、「安心して働ける」という言葉はピッタリでしょう。
雇用期間が定められていないので、ずっと同じ会社で働くことができます。
ですが、直接雇用には雇用期間があらかじめ定められている契約社員もありますので、一概には言えません。
契約社員は安定に欠けていると言っているのではありません。
派遣社員と契約社員とで比較してみれば、メリットとして考えても良いでしょう。
派遣社員の雇用期間は一般的に1~3ヶ月ですが、契約社員は6ヶ月~1年です。
また、収入の面では時給制であるのに対して、月給制になります。
契約社員では勤務日数に影響されずに毎月決まった収入を得ることができるのです。
また、雇用の更新についても派遣社員よりは安定すると言えるでしょう。
正社員では福利厚生や手当、賞与などの待遇が格段に上がります。
一方、契約社員は正社員には及びませんが企業によっては賞与が支給されたり、
福利厚生を受けることができます。
こういった制度については企業ごとにことなりますので、契約を交わす際にしっかり確認しなければならない事項です。
〇より責任のある仕事に携わることができる派遣社員では派遣会社と派遣先企業とで業務内容が約束されます。
また、派遣先企業は派遣社員に直接業務指示をすることができません。
ですので直接雇用として働けることになれば、派遣社員の業務内容を超えて
幅広い業務に携われる可能性が高まります。
派遣社員という線引きを超えて業務に勤めたい方や、さらにそのスキルを伸ばしたい方にとってメリットになるでしょう。
デメリット
次はデメリットです。
直接雇用になることのデメリットも主に3つで、それが下記です。
- ライフスタイルに合わせた働き方ができなくなる
- 経験を増やせる機会が減ってしまう
- 職場によっては収入や待遇が悪くなってしまうことがある
こちらも詳しく見ていこうと思います。
×ライフスタイルに合わせた働き方ができなくなる正社員では業務時間が一律で定められていますよね。
業務時間に加えて残業や休日出勤がある場合もあります。
派遣社員と比較すると、このように拘束されてしまう可能性が高くなってしまいます。
契約社員では契約前に、業務時間などに関して企業に相談することができますが
やはり、派遣社員と比べてしまうと思い通りにはいかないようです。
派遣社員のメリットとして、短い期間でさまざまな会社に勤められる点があります。
これはそれぞれの会社で異なるスキルを身に着けられるからです。
直接雇用として働くことは単純にこの逆のことが起こってしまいます。
正社員ならば基本的にずっと同じ会社で働くことになるでしょう。
契約社員では派遣社員よりも長い期間で働くことになります。
これは個人の考え方に委ねられますが、軽いフットワークでさまざなな経験・スキルを積んでいきたいと考えている方にとっては大きなデメリットになってしまうでしょう。
×職場によっては収入や待遇が悪くなってしまうことがある派遣社員は時給制であり、働いた分だけ報酬を得ることができます。
対して、正社員や契約社員は月給制になります。
月給制においては安定した収入として思われがちです。
ですが、人によっては直接雇用に切り変わったら収入が減ってしまったという方もいるようです。
また、派遣会社には独自の福利厚生があるところもあります。
派遣先企業よりも派遣会社の福利厚生の方が良かった...なんて後で後悔したくないですよね。
ですが、収入が下がってしまうことがやむを得ない場合もあるでしょう。
直接雇用に切り替わることによるメリットやデメリットを洗い出し、自分にとってどの働き方が良いのかを調べる必要があります。
直接雇用に切り替わる時に紹介料が発生する?
派遣社員が派遣先の企業に引き抜かれることにおいて都合が悪いのは誰でしょうか?
それは「派遣会社」です。
派遣会社の立場では、優秀な派遣社員は自分の手元に置いておきたいものです。
ですが、優秀な人材ほど引き抜きの話を持ち寄られるのはごく普通です。
そのような背景の裏で契約書にそれを妨げようとする事項が記載されていたりします。
このタイトルにもある「紹介料」は派遣社員が派遣先企業に直接雇用される時に発生します。
なので、派遣会社と派遣先企業とのやり取りになります。
派遣社員にとっては直接的には関わりませんが、
このようなやり取りが発生することがあるということを知っておくと良いかもしれません。
具体的にどんな紹介料が発生するの?
紹介料とは派遣先企業が派遣社員を直接雇用するに当たって、派遣会社に支払うお金のことです。
ですが、この紹介料はケースによっては発生しません。
派遣先企業の立場で考えてみましょう。
派遣社員を直接雇用するに当たって派遣会社に紹介料を支払いたくありません。
紹介料の相場は、見込み年収の約20%~30%とされています。
見込み年収が約300万円だとすると、60万円から90万円です。
これは大きな支出になってしまいますよね。
ですので、派遣会社を通さずに内々で話を進めます。
そして派遣社員が契約期間を終えた後、直接雇用をするのです。
この派遣期間の終了後というのが肝で、この場合には紹介料は発生しないのです。
逆に紹介料が発生するケースもあります。これは派遣会社が派遣先企業に紹介予定派遣として社員を派遣する場合になります。
簡単にいうと、派遣先企業に直接雇用を前提に派遣社員を派遣しているということです。
その派遣社員を直接雇用するには紹介料を支払う義務が発生するのです。
違約金が発生する?
紹介料の他に違約金という言葉を見かけるかもしれませんが、
これは紹介料と同じ意味であり、違いはありません。
違約金と聞くと、派遣社員が派遣会社に支払うようなニュアンスですが全く違います。
どのような場合であっても、派遣社員にそのような支払い義務が発生することはありませんので心配はありません。
まとめ:必ずしも直接雇用が良いとは限らないので冷静に
今回の記事では直接雇用について説明しました。
直接雇用の内容や、気を付けたいこと、そのメリット・デメリットを
挙げましたが、どう感じたでしょうか?
- 実際に働いている会社なら安心して承諾できる
- 正社員になれるならなりたい
- 勤務形態に縛られずに働きたい
働くことに対して何を求めるかは個人で異なると思います。
働き方にはそれぞれメリットがあれば、必ずデメリットもあることでしょう。
そこをうまく駆け引きして、最善の道を見つけられたらいいですね。