正社員が一番良いと考えている両親に派遣社員で働いているなんて話すと、人によっては否定されてしまう事も多いのではないでしょうか？
派遣社員として働く人は正社員として働く人よりも安定していない、正社員として就職することがいいように言われることが多いですが、実際の所どうなのでしょうか？
派遣社員は本当に安定していないのでしょうか？
派遣社員と正社員の給料の違いと日本社会の雇用体制の変化の点から考え、派遣社員の実情についてみてみましょう。
そもそも派遣社員ってどんな働き方なの？
正社員は安定していて、派遣社員が不安定と言われる理由は以下の３つです。
- 給与形態の違い
- 誰に雇われているかの違い
- 雇用期間の違い
正社員は会社に直接雇われている社員です。
業種にもよりますが、月給制を取る企業が多く、基本的にはよほどの理由なしに解雇されることはないとされています。(※最近では少し事情が変わってきています。)
ボーナスが業績に応じて受け取れ、会社独自の有給休暇などの福利厚生を利用することができるのが特徴です。
一方、派遣社員は派遣会社に登録し、派遣会社より仕事案件の案内があり、派遣会社へ派遣依頼をした会社で就業します。
正社員のように、就業先の会社との雇用契約はなく、給料の支払いは派遣会社からされ、福利厚生も派遣会社のものを利用します。
就業先が決まれば、就業先の会社で仕事の指示を受けますが、契約に期間が定められているため就業期間満了後、同じ会社で働けるかは就業先の会社の都合や場合によっては派遣法の規定により左右されるでしょう。
例えば会社の資金繰りが苦しくなったり、大幅な人件費の見直しが必要になったりすると、契約を更新できない時があります。
歴史的な経済不況の際は突然の派遣切りにあった派遣社員もいて、大きな問題になりました。
また、同じ会社の同じ部署で派遣社員として働くには３年が上限と決められており、それ以上働き続けるには派遣先と直接雇用を結ぶか派遣元で無期雇用契約を結ぶ必要がありこれも不安定と言われる所以と言えるでしょう。
ただし、給与の面では、正社員よりも多くもらう派遣社員も多く残業が少ない傾向にあるので労働時間も正社員より少ない傾向にあります。
まず高時給な理由としては簡単に解雇できない正社員の給与のような長期的な固定費とは違い派遣社員は業績によって雇用を調整できるためその分平均時給は正社員よりも高くなりやすいことが挙げられます。
残業時間が少ない傾向にある理由としては、派遣社員は実際に働いている会社と給与を払う会社が違うため、サービス残業が発生しにくい環境にあり、コストが嵩んでしまう為なるべく早めに退社してもらいたいという派遣先の意向があるからです。
時給の高さと解雇のしやすさがトレードオフ
派遣社員の時給相場は約1,500円で、首都圏に近づくほど高くなりやすい傾向にあり三大都市圏では平均時給は1,700円程にまでなります。
仮に時給1,500円1日8時間勤務し、1カ月20日間出勤したとすると、月給は160時間勤務で、240,000円となります。
当然今回紹介した金額は平均値で実務経験を得たりキャリアアップやキャリアチェンジで数百円単位で時給をあげる事も可能で状況によっては給与をあげることは可能です。
大卒の初任給が20万円をきる会社も少なくはないことを考えると、給与に関しては若い正社員や女性社員よりも非常に高い水準といえるでしょう。
派遣社員の時給は業界や派遣社員の実力によっても左右するので、あくまでも一例ですが、正社員よりも給与の面で恵まれていることもあります。
しかし、それでも派遣社員が不安定というイメージがあるのは、雇用期間に関する契約内容です。
派遣社員は多くの場合数か月の契約で派遣され、勤務態度や仕事ぶりで契約を更新するかを就業先の会社は判断します。
派遣社員の能力だけでなく、労働者本人には全く責任のない就業先の会社の財政的な問題も関係してきます。
数か月間の派遣契約後、派遣継続するかどうかを決められる就業先の会社にとっては、正社員のように長期的なコストがかからないので、平常時においては派遣社員の時給を高く設定しても問題はありませんし、何かあればすぐに解雇することが可能です。
ただ派遣社員からすると、数か月ごとに「仕事がもしかしたらなくなるかもしれない」という不安があります。
このことが派遣社員が不安定とみられることに繋がっています。
しかし、派遣会社には常に数百から数千件の求人が用意されており現在の派遣先が業績悪化で派遣切りを行おうとも派遣元が同じような案件を用意してくれます。
働いている会社１社の安定という意味では不安定かもしれませんが、総合的に考えるとそこまで不安定ではないように思われます。
時給と月給の違い
給与が時給制という点も派遣社員が不安定というイメージを作っています。
多くの場合、派遣社員は時給制、正社員は月給制の企業が多いです。
どちらにもメリットデメリットはありますが、時給の場合、祝日など休みが多い月、体調不良などで欠勤があった月は月あたりの収入が減ってしまいます。
正社員の場合、祝日が多くても月給は減りませんし、欠勤しても人事評価への影響はあるでしょうが給与への影響はありません。。
時給、月給どちらの方がいいかは人によって違ってきます。
例えば、給料を多くもらいたいなら時給の仕事の方がニーズが合いますし、毎月安定して同じ金額がもらえる方が安心できる人なら月給の方が向いています。
しかし、昨今では正社員の給与に日給月給という給与体系を採用している会社も出てきました。
これは欠勤したりするとその分の給料が控除される仕組みで正社員の待遇悪化によって相対的に時給や日給といった非正規労働者との格差は縮まっているのが現状です。
終身雇用崩壊後の正社員はどうなるのか？
かつての日本では正社員は終身雇用され、在籍していれば年数に応じて給料があがり、ボーナスもしっかりともらえていました。
その背景から正社員は安定しているというイメージができ、今でもそのイメージは残っています。
大手企業や昔ながらの体制の企業ではもしかしたら変わっていない企業もあるかもしれません。
しかし、世界情勢の変化や労働環境の変化などで、正社員だからといって終身雇用されるとは限らなくなってきていますし、ボーナスも昔のように出ない企業もあります。
『もしかしたら変わっていない企業もあるかもしれません』と書きましたが、そういった企業は淘汰されている傾向にありそもそも雇用自体がなくなってしまうという現象も発生しているのをご存知でしょうか？
働き方に対する考え方も、1つの企業に一生働くのが当たり前ではなくなり、自身の能力を高めるための転職活動も一般的になりつつあります。
また、2020年に施行された同一労働同一賃金では、派遣社員の待遇を正社員並みに改善するのではなく、逆に正社員の待遇を派遣社員よりに改悪する企業が多くあり、話題となりました。
正社員＝安定のイメージの根本が変わってきているので、一概に派遣社員よりも正社員の方が安定していると言えなくなってきています
一方で、派遣社員の場合、派遣会社が間に入っているので、正社員よりもメリットになることがあります。
例えば、派遣社員にサービス残業が発生しないようになっており、時間超過分はきっちり計算され給料に反映される仕組みがあります。
サービス残業はブラック企業にありがちな労働問題ですが、派遣会社が間に入ることでこれを防ぐことができるので、その点は安心でしょう。
また、日本は人口が減ると共に、労働人口も減っています。
こういったことから、労働力が不足する企業からの、派遣社員を望む要望は増える傾向にあります。
案件が豊富にあれば、仕事に困ることも少ないでしょうし、もしもあなたがより高い時給の仕事を望むのであれば、高時給の案件に変えることもでき、また、挑戦したい仕事を決めて案件を選ぶこともできます。
このように、派遣社員が不安定というイメージは以前は一般的だったかもしれませんが、給料の面や待遇の面でメリットがあり、そして案件が豊富にある現代において、現実に即しているとは言えなくなってきているのかもしれません。
あなたが今後、どんな働き方がしたいか、給料がどれくらいほしいかを考えるうえで、正社員のみだけでなく、派遣社員としての働き方も選択肢にいれていいのではないでしょうか。
イメージにとらわれずに決めよう
派遣社員としての働き方は必ずしも正社員の働き方よりも不安定とは言えません。
当然経営基盤が盤石で成長している企業や待遇の良い企業で働くのであれば正社員の方が良いことは明らかですが、そのような企業はほんの一握りの企業で多くの人が働いている会社はそういった会社ではありません。
優良企業に勤められないのであれば正社員と派遣社員の差はほとんどなくなってきてしまっているといっても良いのではないでしょうか？
それは昔のように正社員が安定した雇用形態ではなくなってきたこともありますが、何より、時給が高く、仕事の案件が豊富にあるなどのメリットもあるからです。
派遣社員として働くことに迷っている方、派遣社員としての働き方に悩んでいる方、どんな働き方をしたいのかをもう一度考えてみませんか。
