主婦(主夫)がパートで働くにあたって「扶養控除の範囲内で働くかどうか」という点はしっかり考えるべきポイントです。そもそも、パート主婦(主夫)にとって扶養控除とはどういうものなのか、扶養控除に関してよく聞く「103万・106万・150万の壁」とは何なのか、それらについてご説明します。

パート主婦(主夫)にとって、扶養控除とはどういうもの?

そもそも扶養控除とは、世帯主(納税者)に、所定の条件を満たし控除対象となった扶養親族がいる場合に、納税者の所得から一定額を控除できる制度を指します。

そしてこの扶養親族の中でも、納税者に控除対象となる配偶者がいた場合は「配偶者控除」「配偶者特別控除」という、配偶者のみが対象となる扶養控除を受けられます。

つまりパート主婦(主夫)にとっての扶養控除である配偶者控除や配偶者特別控除は、適用されれば、世帯主=納税者の納税額を抑えられる制度と言えます。

103万・106万・150万の壁とは何?徹底的に解説!

パート主婦(主夫)の扶養控除=配偶者控除を考えるにあたって、よく聞く言葉として挙げられるのが、103万・106万・150万の壁、という言葉です。

この3つの壁をざっくりと分類すると、以下のとおりです。

  • 103万円の壁、150万円の壁は所得税や住民税の壁
  • 106万円の壁は社会保険料の壁

それぞれについて詳しくご説明しましょう。

所得税や住民税の壁、旧制度では103万円、現行では150万円

103万円の壁、150万円の壁は所得税や住民税の壁であり、この壁を超えてしまった場合は、その超えた額に対して、所得税(5%~45%)や住民税(約10%)が課せられます。

では、103万円の壁と150万円の壁の違いは何かというと、

  • 103万円の壁=2017年まで適用されていた旧制度
  • 150万円の壁=2018年から適用された新制度

というもので、103万円の壁と150万円の壁は同時には存在していません。

2017年までは、パート主婦(主夫)の給与所得が103万円までであれば、世帯主である納税者の所得から38万円の配偶者控除ができました。そして103万円を超えても141万円までなら、配偶者特別控除(配偶者であるパート主婦(主夫)の収入が上がるたびに、控除額も38万円から0円に減額される控除制度)を受けられました。

これが2018年からは、パート主婦(主夫)の給与所得が103万円を超えても150万円までなら、配偶者特別控除は配偶者控除と同額である38万円の控除額となる制度に変わったのです。

つまり、給与所得が103万円以上のパート主婦(主夫)にとって、対象となる控除の種類が配偶者控除から配偶者特別控除に変わるものの、受けられる控除額そのものは38万円のままで変わりない、ということです。そして給与所得が150万円を超えた場合でも、201万円までなら控除額が減額されていく配偶者特別控除が受けられます。

これだけ見ると2018年からの制度のほうが、配偶者特別控除が適用される給与所得の枠がぐんと広がったのでお得に思えますが、この新制度適用の際に「世帯主である納税者の合計所得は1,000万円以下であること」という条件が追加されました。世帯主である夫の所得が多い状態だと、いくら妻側の年収が配偶者控除や配偶者特別控除の範囲内であったとしても、その制度が適用されなくなってしまいます。

106万円の壁を超えるとパート主婦(主夫)自身が社会保険料を支払う必要がある

社会保険料の壁となる106万円の壁を超えると、パート主婦(主夫)は社会保険料を支払って健康保険や厚生年金に加入する必要があります。

ただし、この106万円の壁は、すべてのパート主婦(主夫)に適用されるわけではありません。106万円の壁は「勤務時間が週20時間以上」「1ヶ月の賃金が88,000円以上=見込み年収106万円以上」「勤務期間が1年以上になる見込み」「勤務先の企業の従業員数が501人以上」「学生以外」という5つの条件すべてに当てはまるパート主婦(主夫)が対象となります。

たとえば、従業員数500人以下の企業で働く、週20時間未満で働く、など、上記の5条件から何らかの条件が外れるパート主婦(主夫)の場合にはこの106万円の壁は適用されず、社会保険料を支払う必要が出てくるのは所得130万円以上から、となります。

パート主婦(主夫)には2種類の壁があることを理解しておこう

パート主婦(主夫)には、所得税や住民税に関わる150万円の壁(旧103万円の壁)と、社会保険料に関わる106万円の壁(企業規模などによっては130万円の壁)の2種類があります。

社会保険料に関わる106万円・130万円の壁を超えてしまうと、健康保険や厚生年金の負担が大きくのしかかってくるので、そうした負担なく扶養控除内で働きたいと考えるなら、何よりもこの106万円・130万円の壁を超えないようにするのがおすすめです。