コールセンターやヘルプデスクといった顧客相談窓口のほか、顧客と直接店頭で接する接客業を派遣社員が担当することがあります。
その際には、様々なクレームに対応しなければなりません。
派遣社員であっても、顧客からは派遣先の会社の一員として見られるので、対応の仕方には慎重にならざるを得ないでしょう。
派遣社員はどのようにクレームを処理すべきかについて解説します。
基本的には正社員や上長に任せてよう
派遣社員は、外部から派遣された部外者なので、本来はクレームに対して1から10まで対応する必要はありません。
派遣業務の内容にクレーム処理が含まれていない場合は、派遣先の会社の正社員や上司にクレームを引き継ぐようにしましょう。
派遣社員がイレギュラーなクレームに対応したばっかりに派遣先に対する認識違いからさらなるクレームに発展する可能性もありますし、派遣社員が一人で辛い思いをする必要もありません。
クレームの内容が専門的で派遣社員には理解が難しかったら、早めに正社員に交代することが必要です。
一通りクレームの内容を聞いた後で正社員に取り次いでも良いのですが、その際には顧客の主張の内容をきちんと派遣先の正社員に報告しなければなりません。
いったんクレームの内容を派遣社員が聞いた後で、派遣先の正社員に顧客がもう一度最初から説明し直さなければならないということになったら、顧客の怒りが増大してしまうでしょう。
派遣業務にクレーム処理が含まれている場合は、クレーム処理の流れに沿って対応する対処法を身につけることが求められます。
まず、顧客の心情を理解するように努め、心から謝罪の言葉を述べるようにします。
顧客は損害を被ったのだからまず謝ってほしいと思っているケースがほとんどなので、最初に「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と述べることにより、クレームした大半の顧客の気持ちがほぐれてきます。
それから、クレームの内容について尋ねて事実確認と原因の追及を行います。
顧客に事実誤認があれば、穏やかに指摘して「また何かお気づきの点があれば何なりとお申し付けください」と述べて、相手に恥をかかせない配慮を怠らないようにします。
その場で原因の究明ができて解決策や代替案を提案できる事例であれば、提示してみて反応を見るようにしましょう。
商品の不備や製品の操作法など専門家のアドバイスが必要な場合には、一人で解決しようとしないで、速やかに派遣先の正社員へ引き継ぐことが大切です。
その際に、正社員に引き継ぐまでの時間を短くしなければなりません。
電話対応の場面で、延々と保留のメロディを流して顧客を待たせておいたら、顧客の怒りが増幅してしまいます。
また、たとえ解決できたとしても、最後にもう一度謝罪の言葉を述べることを忘れてはいけません。
「この度はご不便な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。貴重なご意見をありがとうございました。」とお礼を加えて締めくくると、顧客も満足することでしょう。
声や態度、間の取り方にも気をつけよう
クレームの聞き方や態度も重要です。
早口や馴れ馴れしい口調は避けなければなりません。
あまりにゆったりとした語り口も、顧客が馬鹿にされたと感じる原因になります。
顧客は問題が解決しさえすればよいと思っているわけではなく、誠意を見せて欲しいと考えてクレームしているからです。
謝罪の仕方も重要で、単に謝れば良いというものではありません。
相手が何に対して腹を立てているかという点を理解し、その点についてお詫びの言葉を告げることが大切です。
ゆっくりと深くうなずきながら、相手の言葉を遮らないように最後まで耳を傾け、顧客の気持ちに寄り添っていることを最大限に表明しましょう。
途中で気が付いたことがあっても、その場で指摘すると、相手は自分の主張を邪魔されたと感じてしまいます。
相手がしゃべり終えてから、間を図って共感の気持ちを伝えるように心がけましょう。
相手が早口だからといって、矢継ぎ早に口を挟まないように気を付けなければなりません。
最終的に問題を解決できても、クレームを受ける過程で機械的な対応をすると、相手の感情を逆撫でしてしまうことがあるのです。
特に、クレームの内容が社員の接客態度に対するものだと、クレーム対応は慎重にせざるを得ません。
店員の態度が横柄で不愛想であるなど、社員の接客マナーに関するクレームは少なくないのです。
こうしたクレームをしてくる顧客は感情的ないら立ちをおさめることが主目的なので、対応する派遣社員の態度が非常に重要となります。
商品の欠陥等に対するクレームと異なり、相手の感情を和らげるスキルがあれば十分ですから、派遣社員でも正社員の助けを借りずに対処できることも多いでしょう。
理不尽なクレームや業務請負の妨害になるクレームには毅然とした対応も
謝罪の言葉を重ねてどんなに丁寧な対応をしても、全く受け付けない悪質なクレーマーもいます。
また、自分の勘違いでクレームを入れてきた顧客が、間違いを指摘された後も逆ギレしてクレームを止めようとしない場合もあるでしょう。
嫌がらせやストレス発散のためにクレームしてくる顧客に対してひたすら謝るだけでは、派遣社員が辛い思いをするだけで解決しないこともあります。
そこで、最低限の礼節を保ちつつ、言いがかりに対しては毅然とした態度で対応することも必要です。
最大限の誠意を持って対応したうえで、それ以上の要求があるなら具体的に提示するよう求め、その要求が理不尽なものであれば、きっぱりと断る勇気も求められるのです。
中には

といった脅迫めいた言葉を吐くクレーマーもいますが、これに対しては上司の許可等をとった上で
「こちらも適切に対処しますので、お客様のご判断で手続きをお取りになってください」
と述べてやんわりと制するようにしましょう。
あまりにしつこく電話してきて謝罪を求めるクレーマーについては、強要罪や業務妨害罪など刑法に抵触することを告げて告発する姿勢を見せることも重要です。
理不尽な金銭の賠償を求めるクレームは、恐喝罪に当たる可能性があると指摘しても良いでしょう。
常識を外れたクレームに関しては、社内の顧問弁護士などに相談できるシステムが無いか確認することも必要です。
会社の運営に損害を及ぼすようなクレームに対しては、会社がチームとなって対応することが求められるので、派遣社員だけに任せるようなことがあってはならないのです。
クレームに耐えられない時は派遣元にも相談を
あまりにひどいクレームが重なったり、しつこ過ぎて対処できないクレームを受けたりした場合には、精神的負担が大きすぎて派遣社員が参ってしまうこともあるでしょう。
派遣先の正社員がきちんとした対応をできず、派遣社員に過剰な負担がかかるときは、派遣元にも相談することをおすすめします。
派遣元企業と派遣先企業が、顧客からのクレームに対する対処法について、契約として取り決めを行っている場合もあります。
派遣元責任者が派遣先企業と交渉し、派遣社員の役割の限界について協議することもあるでしょう。
それでも埒が明かないケースでは、派遣先企業を変更してくれることもあるのです。
クレームに対しては派遣社員ができることを把握し、一人で背負わないようにしよう
派遣社員が請け負う仕事には、クレームを伴うものが少なくありません。
全てのクレームに適切に対処することは困難ですが、標準的なスキルを身に着ければ派遣社員もある程度の対応は可能です。
あまりに悪質なクレームに対しては、派遣社員が一人で背負わずに派遣先企業の正社員や派遣元責任者の支援を得て、チームで対応するようにしましょう。